入居を断られたのは差別だとして、介護施設を訴えたトランス女性

Nursing home settles historic transgender discrimination complaint (nbcnews.com)

法律の専門家によれば、この和解は、他の介護付有料老人ホームに対しても、トランスジェンダーに対する差別を禁止する法律を遵守しなければならないことを示すものだという。

79歳のトランスジェンダー女性から差別の告発を受けたメイン州の介護施設は、この和解により、LGBTQの高齢者を歓迎するための方針と手順を確立することに同意しました。

マリー・キングさんは、10月にメイン州人権委員会に、ジョンズポート町にあるサンライズ・アシステッド・リビング介護施設が、彼女がトランスジェンダーであることを理由に入居を拒否したと訴え、この種の訴えとしては米国史上初であるため注目されていました。

この和解は法的拘束力を持つものではありませんが、しかし法律の専門家は、老人ホームやその他の福祉施設は、トランスジェンダーに対する差別を禁止するさまざまな州法や連邦法を守らなければならないという認識を高めると期待しています。また、この和解は、そうした施設がLGBTQの高齢者のニーズによりよく応えるための対策を推進するものでもあります。

ウィリアムズ研究所によると、65歳以上の高齢者の増加に伴い、トランスジェンダーの成人も高齢期に入ることが予想されています。調査によると、トランスジェンダーの高齢者は、一般的な高齢者よりも介護付き住宅を必要とする可能性が高く、その一因として、家族から疎外され、健康状態が悪く、低所得で生活する傾向があることが指摘されています。

月曜日に、メイン州人権委員会は、同委員会とボストンに拠点を置くGLBTQ 法律擁護団体(GLAD)と、サンライズ介護施設を含む州内の9つの介護施設を経営するメイン州アダルト・ファミリー・ケア・ホームズ社が交渉した和解条件を承認しました。

キングさんは、GLADの弁護士を通じて発表した声明の中で、「このような前向きな結果を得て、感激しています。新しい方針によって、トランスジェンダーの人たちが虐待を経験することがなくなり、トランスジェンダーの人たちも他の人たちと同じように尊厳と敬意を持って扱われることを求めているだけだということが理解されると信じています。」

ホームズ社は、和解したものの、キングさんに対する差別を否定し続けています。同社は、トランスジェンダーに対する差別を禁止する包括的な方針を採用することを誓約しています。また、トランスジェンダーへの対応に関する研修に全スタッフが参加することを義務付ける予定です。

GLADの弁護士であるクリス・アーチャルは、こうした施設の職員の多くは、トランスジェンダーとそのニーズに関する教育や認識が不足しており、どのように法律を遵守すればよいのか分からないのだと述べています。

「これは画期的な和解です。なぜなら、この法律の最低限の要件と、それを遵守するための方法を明確にしたからです。」

カリフォルニア大学法学部のシンクタンクであるウィリアムズ研究所は、米国には65歳以上のLGBTQが少なくとも77万1000人おり、そのうちトランスジェンダーの高齢者は17万1100人いると推定しています。

「我々の研究では、LGBTの高齢者は、異性愛者でシスジェンダーの大人にはない、ヘルスケアや社会的サポートを受けるための障壁に直面していることが明らかになっています。」とウィリアムズ研究所研究員のアイラン・メイヤーは述べます。「願わくば、他の施設もこの和解案と一致した対策を実施してほしいものです。」

メイン州を含む米国の半数近くの州は、住宅と公共宿泊施設の両方で性的指向や性自認に基づく差別を法律で禁じており、これは介護付き住宅施設にも適用されています。

2021年春、キングさんが医療を受けていたメディカルセンターのソーシャルワーカーは、サンライズ介護施設に彼女の入居を求めました。当初、この長期介護施設のソーシャルワーカーは、空きがあると言っていました。しかし、キングさんの訴えによると、サンライズ介護施設のソーシャルワーカーは、彼女がトランスジェンダーであることを知ると、シスジェンダーの女性のルームメイトと一緒にさせたくないので、彼女を受け入れることはできないと言ったそうです。

2022年3月14日、メイン州人権委員会は、サンライズ介護施設がメイン州人権法で保護されている性自認、トランスジェンダーの地位、性別を理由に彼女を差別したと主張する合理的根拠がキングさんにあることを、3対2の投票で認定しました。

米国保健社会福祉省は、サンライズ介護施設がキングさんの入居を拒否したとされる行為が、「医療保障法」の性差別規定に違反するかどうかを判断するため、独自の調査を進めているところです。裁判所は、2010年に制定されたこの法律により、福祉施設を含む連邦資金を受ける医療環境において、性自認に基づく差別を禁止していると解釈しています。

ホームズ社の代理人を務めるジョン・K・ハマー弁護士は、声明の中で、サンライズ介護施設のソーシャルワーカーがキングさんのソーシャルワーカーに対して、シスジェンダーの女性のルームメイトが “トランスジェンダーのルームメイトを持つことに抵抗を感じる可能性があるため” 、サンライズ介護施設が 「キングさんにふさわしい場所ではない」と言っただけだと述べています。

「しかし、サンライズ介護施設は、もしキングさんが入居を申請していれば、トランスジェンダーであることを理由に入居を拒否することはなかったはずです。キングさんは入居申請しなかっただけです」。

さらに、「サンライズ介護施設はこのような誤解が二度と起こらないように、GLADと協力して既存の方針を強化し、研修を行うことに満足しています」と付け加えた。

和解の一環として、同施設はキングさんに1,000ドル、GLADに弁護士費用として8,500ドルを支払うことに合意している。

ヒューマン・ライツ・キャンペーン(※米国最大のLGBTQ擁護団体およびLGBTQ政治ロビー団体)のディレクターであるサラ・ワーベロー氏は、アメリカ人の70%がLGBTQアメリカ人の無差別保護を支持しているという調査データを指摘した上で、今回のメイン州での和解は、「LGBTQの人々が差別を受けたときに救済措置を受けられるという、理想的な姿を如実に表している」と述べました。