公園のトイレ、男女同色にー明石市

公園のトイレ、男女色分けせず 「性的少数者への配慮足りない」の声反映|総合|神戸新聞NEXT (kobe-np.co.jp)

男性用は青色、女性用が赤色って当たり前?-。兵庫県明石市が公園に整備するトイレについて外装の色を市民投票で決めたところ、「性的少数者への配慮が足りない」と指摘され、男性用を青、女性用を赤とした最多票の案を撤回した。最近は街中で、利用者の性を特定しなかったり、男女で色分けしなかったりするトイレを見かけるが、どんな「配慮」が求められるのだろうか。(小西隆久)

 市民から最多の票を得た配色案が覆ったのは、同市大久保町松陰、石ケ谷公園にある「あそびの丘」に設置するトイレ。市は「利用者の声を反映させたい」として配色が異なる5種類のデザイン案を用意。7月17日から約2週間、公園に投票箱を置き、親子ら743人が投票した。

 開票の結果、男性用が淡い青色、女性用が淡い赤色の案が最多の208票を獲得した。次点は8票差で、全体を落ち着いた茶系色で統一し、性別の色分けがない案だった。

 明石市の担当課は最多の配色案を選んで公表すると、市民から意見が2件寄せられた。市によると「『男性が青、女性が赤』という決めつけは性的少数者への配慮が足らない」「市は性的少数者が暮らしよいまちづくりと言いながら、過去の固定概念にとらわれている」とする問題提起だった。

 担当職員は、性的少数者への理解を進める施策などを担当する庁内のSDGs推進室に経緯を伝えた。同室は「市民の選択を最優先するのは当然だが、用意する選択肢でもっと配慮ができたのではないか」と応じた。市は再び協議し、性別で色分けしない次点の配色案に変更した。

 同室の山田賢室長は「今回の対応に明確な正解はありません」と前置きした上で「男女を二分するのはジェンダーの固定化につながる。悪意がなくても、それによって困る人や不快に感じる人がいるなら、もう少し考えてみようということ」と話す。

 そもそも男女のトイレマークが色分けされたのは、1964年の東京オリンピックがきっかけとされる。男性はズボン、女性はスカートで示したマークだけでは、男性がスカートをはく国もあり不十分との配慮から、男女の色分けが採用されたという。

 男女用を同色にすれば分かりにくさも想定されるが、「デザインは社会へのメッセージを映す鏡でもある」と山田室長。多様な性への理解を促す取り組みを続ける中で「これまでの価値観を変えるのは簡単でないが、よりよい方法を考え続けるのが大事」と訴える。

■「男女別のみ、選択困る」2割 大手メーカー「TOTO」調査

 公衆トイレなどで利用者の性に配慮した空間づくりが求められる傾向は、生活設備機器メーカー「TOTO」(北九州市)の調査でも明らかになっている。

 同社が2018年、体の性とは異なる性自認を持つ「トランスジェンダー」ら約800人に尋ねた調査で、「男女別のトイレしかなく選択に困る」と答えた人は21・4%に上った。

 サインや色分けで男女別になっているトイレに入る際、周囲の視線などをストレスに感じる人も3割程度いて、性を問わない「多機能トイレ」「男女共用トイレ」が利用される頻度の高さも分かった。

 同社は20年の調査で、トイレ入り口の色も「トランスジェンダー」を含む約1400人に尋ねた。着色されたサインが好まれる一方で、性別を意図する壁などの着色に抵抗を感じると回答したトランスジェンダーが9%おり、「男女を色で表すことに意味が感じられない」などの意見もあったという。(小西隆久)

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208票の意見が、2件の「性的少数者への配慮」を求める意見で覆されたという事実を、あなたはどう思われるだろうか。