ドイツのセルフID新法によって、誰でも年に一度、法的な性別を変更できるようになる。

German Self-ID to Allow Changing Legal Sex Once a Year (4w.pub)

ドイツでは2022年末までに、14歳以上であれば誰でも戸籍上の性別と名字を用紙に記入するだけで法律上の性別を変更できるようにする法案を成立させる予定です。6月30日の記者会見で、ドイツの2人の大臣が「性転換法」改革の最初の要点をこのように発表しました。

14歳〜18歳の未成年者の場合、新法では法的保護者の同意があれば、書類上の性表記を変更することができるようになります。14歳未満の子供の場合は、その親が子供に代わって書類を提出する権利を持ちます。

もし、法定保護者の一人が性別変更に同意しない場合でも、家庭裁判所は未成年者の請求により、”子供の最善の利益に基づき、保護者の決定を差し替える “ことができます。

今のところ、法律上の性別を変更できる回数に制限はありません。しかし、1年間の待機期間が設けられています。その期間内であれば、再び書類を変更することが可能です。ドイツ家族省の説明によると、”これは性急さを防ぐ役割を果たし、変更要求が真剣であることを確認するためのものである “とあります。

新法では、性転換法ですでに定められていた旧名称の開示禁止が「拡大」され、罰金刑が追加されることになります。セルフID新法案の要項には、罰金をどの程度にするかは触れられていません。しかし、2020年の同法案の草案では、最高2500ユーロの罰金が提案されていました。

この法案では、裁判所が任命した2人の専門家の独立した評価でもって、法的な性転換を根拠づけてきた1981年施行の従来の性転換法は廃止される予定です。法案の要点を提示した大臣の一人であるリサ・パウスは、これらの前提条件を「非人間的なハードル」とし、申請者にとってこのプロセスは「深い屈辱的」であると述べています。

ドイツのクィア大使であるスヴェン・レーマン氏も、「これらの手続きは長く、費用がかかり、なによりも品位を傷つけるものである 。」と述べています。彼はまた、申請者は現在の審査用アンケートで、「平均して、月に何回くらい自慰行為をしますか?また、男性の外見をしている場合、女性用の下着をつけて自分を刺激していますか?」といった不適切な質問をされていると主張しています。

「女性宣言インターナショナル」の元代表であるステファニー・ボーデは、4Wにこう語ります。「ドイツの法律には、申請者が「異性」に移行する意思を真剣に持っているかどうかを評価する方法が記されていないのです。 」彼女によると、定型の書式すらも存在しないため、「専門家」が申請者に好きな質問をすることができるのだそうです。

「性的な側面に焦点を当てる専門家もいるのかもしれません。それは自閉症の男性の診断の場合には理にかなっていますが、もしそのような場合(自閉症)でも、専門家は性別変更を拒否することはほとんどありません。」と彼女は付け加えました。

男女別規定への影響
ドイツ家族省はホームページで、「セルフID法は女性保護施設における既存の慣行を変えるものではない 」と述べています。また、「施設側に特定の人を入所させる義務はない 」とともに、「女性が法令やルールを遵守できない場合は、女性保護施設から追放することができる 」と付け加えています。

セルフID法成立後、DVシェルターで女性の安心感をどのように確保したいかと記者から問われたドイツ家庭相は、こう答えた。「トランス女性も女性です。だからここで議論する必要はないと思っています。」

スポーツへの影響については、家族省のホームページで「スポーツ大会への出場については、スポーツ協会が自らの責任で決定する」としています。「セルフID法はそれを変えるものではありません 。」

このドイツのセルフID法案が通る確率について、ステファニー・ボーデは4Wの取材にこう答えています。「それは非常に確率が高いです。政府は当初から、セルフIDをウクライナ戦争やエネルギー危機と並ぶ重要課題として、重点的に取り組みたいと明言しています。現時点では、この法案が通らなかったら奇跡と言えるでしょう。」

ボーデさんは、ドイツのフェミニストの中には法案に反対する人もいるが、ドイツのラディカルフェミニスト運動は、他の国に比べてまだ遅れていると説明します。

「ドイツのフェミニストはイギリスほど強くはありません。たいていは「真のトランス」という物語の信奉者で、中には1981年の性転換法の改正や、『エマ』誌の女性たちのように今のままでいいと主張する人さえいます。」

「しかし、ラディカルフェミニストや他のジェンダー批判的な人たちもいて、すでに何度か抗議デモを行っています。WDIは7月2日にケルンでセルフIDに反対するデモを組織し、「女に語らせよ (Let Women Speak)」という同盟もベルリンのノルウェー大使館前でノルウェーのクリスティーナ・エリンセンを支援するためのデモを行いました。このような抗議活動を行うときはいつでも、セルフIDの問題を含めて行っています。」

「セルフIDに対する異議申し立ては高まっていると言えるでしょう。また、主流メディアでもこの問題が注目されるようになり、あえて批判的な発言をするジャーナリストも増えています。しかし、明確な言葉を使う声――例えばイギリスのケリー・ジェイ・キーン(ポージー・パーカー)のような――がないのが寂しいですね。」とボーデは付け加えました。

改革法案の全文は、秋頃に公開される予定です。

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