トランスジェンダーの2人「性的マイノリティーにも寄り添って」 埼玉県警の研修で若手の性犯罪捜査員に講演

トランスジェンダーの2人「性的マイノリティーにも寄り添って」 埼玉県警の研修で若手の性犯罪捜査員に講演:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

埼玉県警で性犯罪捜査に携わる若手警察官向けの研修があり、心と体の性が一致しないトランスジェンダーの二人が講演した。二人は性には多様性があることや、当事者としての体験などを紹介し「性的マイノリティー(少数者)にも一人の人間として寄り添ってほしい」と呼び掛けた。(杉原雄介)

講師を務めたのは、ともに東京都大田区の会社員、山崎和舞(かずま)さん(30)と池田カンタさん(28)。二人は女性として生まれたが男性として生きるトランスジェンダー(FTM)だ。山崎さんによると、勤務先の同僚を含めた三人で「ftm三兄弟」を名乗り、二〇二〇年から「自分たちのような人が勇気を持って生活できる社会にしたい」と情報発信。就職活動時に「化粧もマナー」と言われて悩んだことや、改名やホルモン注射などの情報を交流サイト(SNS)で紹介したり、体験談を全国の学校や企業で話したりしている。

県警での講演は、山崎さんが女子プロ野球選手だった時の先輩で、性犯罪捜査にあたる捜査一課員からの依頼で実現した。五月三十日、さいたま市北区の県警察学校で冒頭のみ公開で実施され、県内の警察署から二十五人が参加した。

二人はLGBTをはじめとする多様な性についての知識や、それぞれの生い立ちを説明。山崎さんは幼いころから姉のお下がりや制服のスカートが嫌で生きづらさを感じていたが、野球を通じて何でも話せる仲間ができ、ありのままで過ごせるようになったという。「性的マイノリティーの人が性被害に遭った際、真摯(しんし)に向き合ってもらえず傷つくことがないよう、警察官にLGBTなどのことを知ってもらいたい」との思いを伝えた。

池田さんは学生時代に髪を伸ばしたり、化粧をしたりした時期があったことを紹介。「『女性らしさ』という社会の風潮に流された方が楽かもしれない」と考えたからだったが、親友から「ありのまま生きた方が楽だよ」と背中を押され、男性として生きることを決意したという。「今回の講演が、性的マイノリティーについて正しく知ってもらうきっかけになれば」と期待した。

県警がトランスジェンダーの講師を招くのは今回が初めて。捜査一課の西村国央調査官によると、事件の当事者に対する性自認の確認など、慎重な対応が求められる場面も想定されるといい、理解を深めるきっかけとして企画した。

受講した小川署の臼沢一輝巡査(26)は「見た目などの先入観にとらわれず、幅広い対応力が求められていると感じた」とし、草加署の安川季夏(きなつ)巡査(25)は「勇気を出して被害申告してくれる人に、差別や偏見を持たず捜査できるようにする」と話した。